ハチクサンFLについて
1.薬剤一般
2.毒性
3.魚毒性
4.気中濃度/蒸気圧
5.代謝
6.効力
7.安定性
8.作用機構
9.その他
1.薬剤一般
商品名 |
ハチクサンFL |
<原体メーカー> |
日本バイエルアグロケム(株) |
<有効成分> |
イミダクロプリド |
<有効成分系統> |
クロロニコチニル系 |
<共力剤> |
なし |
<剤型> |
FL製剤(フロアブル剤)*1 |
<有効成分含有量> |
20% |
<希釈倍率> |
200倍 |
<使用濃度> |
0.1% |
<国内外の認定・登録> |
|
日本しろあり対策協会 |
認定番号: 3359 |
日本木材保存協会 |
認定番号: A−4104 |
EPA(米国)*2 |
登録番号*3 : 3125−454、3125−455 |
<消防法> |
該当せず |
<毒物劇物取締法> |
劇物(イミダクロプリドの2%以下は普通
物
従って散布液(0.1%希釈液)は普通物) |
<荷姿> |
FL製剤: 1kg×10本、ポリエチレンボトル |
<ハチクサンFL技術資料(‘96改訂、No.1)、ハチクサンニュース(NO.3)より>
*1,フロアブル: 有効成分の細かい粒子が、水の中に散らばって浮いている(懸濁している)製剤。
懸濁剤とも呼ばれている。
*2,EPA: アメリカ合衆国の環境保護庁(Environmental
Protection Agency)
*3,登録番号 : 商品名 PREMISE(R)2
;登録番号:3125−454
(有効成分イミダクロプリド21.4%、フロアブル剤)
商品名PREMISE(R)75;登録番号:3125−455
(有効成分イミダクロプリド75%、水溶剤、PVA包装入り)
2.毒性
原体/製剤
項 目 |
ハチクサン原体 |
ハチクサンFL製剤 |
<急性毒性> |
|
|
*4
経口(LD50,mg/kg)
ラット
マウス |
雄440, 雌 410
雄100, 雌 98 |
雄3200, 雌 4100
雄660, 雌 700 |
経皮(LD50,mg/kg)
ラット |
雌雄> 5000 |
雌雄> 2000 |
*5
吸入(LC50,mg/m3)
ラット |
雌雄> 5323 |
|
<亜急性毒性>*6 |
|
|
*7
(無影響,mg/kg/日) |
|
|
経口ラット(3ヶ月) |
雄14, 雌 83.3 |
|
経口イヌ(3ヶ月) |
24.2 |
|
吸入ラット(mg/m3)
(6時間/日、5日/週、4週) |
5.5 |
|
<慢性毒性>*6 |
|
|
(無影響量、mg/kg/日) |
|
|
経口ラット(2年) |
雄5.7、 雌 24.9 |
|
経口マウス(2年) |
雄65.6、雌 103.6 |
|
経口イヌ(1年) |
雄15.3、雌 14.8 |
|
<発がん性>*8 |
|
|
ラット、マウス |
発癌性なし |
|
<刺激性> |
|
|
眼、ウサギ |
刺激性なし |
刺激性なし |
皮膚、ウサギ |
刺激性なし |
刺激性なし |
<変異原性>*9 |
|
|
復帰突然変異等 |
変異原性なし |
|
<催奇形性>*10 |
|
|
ラット |
催奇形性なし |
|
ウサギ |
催奇形性なし |
|
<感作性>*11 |
|
|
モルモット |
感作性なし |
感作性なし |
<ハチクサンFL技術資料(’96年改訂、NO.1)、ハチクサンFL講演会資料より>
*4,LD50 : 供試動物の50%が致死する薬量
(Median Lethal Dose)
*5,LC50 : 供試動物の50%が致死する濃度(Median
Lethal Concentration)
*6,亜急性毒性、慢性毒性 : 一定期間に動物に反復投与し、毒性的な性質を把握し、それを
誘発する量(毒性量)と影響しない量を求める試験。
*7,無影響量: 薬剤に暴露した時、暴露した動物に影響の出ない最も大きい薬剤量
。
*8,発がん性 : 動物の生涯にわたって反復投与した時、脳瘍発生が生じるかどうかを調べる試験
*9,変異原性 : 遺伝情報をもっているDNAや染色体に影響を与えるかどうかを調べる試験。
*10,催奇形性: 妊娠動物に投与し、その子供に奇形が生じるかそうかを調べる試験。
*11,感作性 : アレルギーを起こすかどうかを調べる試験。
3.魚毒性
(1)ミダクロプリド (ハチクサンの有効成分)
コイに対するTLm48時間値(48時間以内に50%のコイが死亡する濃度)は
190ppm*12であり、魚毒性のランクはA類相当に分類されています。
他の水生生物のニジマス、アユ、スジエビ及びミジンコに対しても毒性が弱い薬剤です。
また、イミダクロプリドは有機リン系薬剤やピレスロイド系薬剤と比較しても、
その毒性は弱く、水生生物に対して安全性の高い薬剤です。
<ハチクサンFL技術資料(‘96改訂、No.1)、ハチクサンニュース(NO.2)より>
・各有効成分の魚毒性比較表
|
TLm48時間値(ppm) |
有効成分 |
イミダクロプリド1)
(ハチクサンの有効成分) |
有機リン系D剤2) |
有機リン系A剤3)
|
ピレスロイド系E剤2) |
分類 |
A類相当 |
B類相当 |
C類相当 |
C類相当 |
コイ |
190 |
9.5 |
0.13 |
0.012 |
ニジマス |
211 |
|
|
|
アユ |
200 |
|
|
|
スジエビ |
25 |
|
|
|
ミジンコ4) |
260 |
0.13 |
0.005 |
0.94 |
1)ハチクサンFL技術資料(‘96 改訂 No.1)
2)みどりの手引き(弊社刊)、
3)水生生物と農薬(サイエンティスト社刊)、
4)TLm3時間値
・ 魚毒性の分類基準表
分類 |
TLm値(ppm) |
魚毒性の分類は、原則として左表の基準に
従い、毒性の弱い順からA類、B類及びC類に分類されています。 |
コイ(48hr) |
ミジンコ(3hr) |
A類 |
>10 |
>0.5 |
B類 |
0.5〜10 |
≦0.5 |
C類 |
≦0.5 |
|
(2)ハチクサンFLを実際に使用する場面での注意事項
例えば、1m×2m×50cmの水量(1000リットル)に、ハチクサンFLの
希釈液(200倍)が40リットル、間違って入ってしまった場合、その水域内
におけるハチクサンFLの濃度(有効成分イミダクロプリドの濃度ではありま
せん!)は約190ppmとなりますが、この濃度はコイに対して死亡や異常
を認めない濃度です。
*12, ppm : 百万分の一を意味し、例えば1リットル中に1mgの量
に値する。
4.気中濃度/蒸気圧
(1)気中濃度試験
一般家屋で行ったハチクサンFL(有効成分:
イミダクロプリド)の気中
濃度試験では、有効成分は散布直後から5日後及び399日後までの試験
期間で、床下及び室内において検出されませんでした。
また、散布作業者における有効成分のうがい液中の量
及び下着への浸透
量は、いずれも検出限界未満*13でした。
(散布液: ハチクサンFL 0.1%希釈液、1m2当たり3L)
<ハチクサンFL気中濃度試験(No.8)、ハチクサンFL質問と回答(No.2)より>
表: 各サンプリングの場所におけるイミダクロプリド(ハチクサンの有効成分)の検出値
検出時期 |
床下 |
台所、和室、洋室等 |
散布中 |
0.6ug/m3 |
検出限界未満 |
散布直後 |
検出限界未満 |
検出限界未満 |
散布1時間後 |
検出限界未満 |
検出限界未満 |
散布3時間後 |
検出限界未満 |
検出限界未満 |
散布6時間後 |
検出限界未満 |
検出限界未満 |
散布1日後 |
検出限界未満 |
検出限界未満 |
散布5日後 |
検出限界未満 |
検出限界未満 |
散布399日後 |
検出限界未満 |
検出限界未満 |
※検出限界 : 散布中 ; 0.5ug/m3
散布直後〜399日後; 0.8ug/m3
*13, 検出限界未満 : 試験で設定した試験条件において、検出できない濃度。
(2)蒸気圧
各薬剤の蒸気圧
薬剤 |
蒸気圧(mmHg) |
蒸散し易さ
(イミダクロプリドを1とした場合の比較) |
イミダクロプリド |
1.5×10−9(20℃) |
1 |
有機リン系A剤* |
1.87×10−5(25℃) |
12,467 |
有機リン系B剤* |
約10−4(20℃) |
66,667 |
有機リン系C剤* |
6×10−6(20℃) |
4,000 |
*木材保存処理作業の安全指針(発行 : 日本木材保存剤審査機関、1986年)
蒸散し易さの比較
5.代謝
ラットにハチクサンを経口投与した場合、速やかに吸収され、全身に分布します。
その後、主に尿中から速やかに排泄されます。
投与8時間後に50%が排泄され、24−48時間後には大部分(93−98%)が排泄されます。
<ハチクサンFL講演会資料より>
6.効力
項 目 |
ハチクサン |
<室内効力> |
|
殺蟻効力 |
(原体)
LC50 (4日後) : 2.5ppm |
速効性 |
(FL製剤)KT100*14 : 15分以内/1000ppm
(直接噴霧) |
穿孔(公的試験) |
(FL製剤)0.1%で性能基準満足
(性能基準
: 穿孔度1以下) |
残効性 |
(原体)
薬剤処理木材を1年保存した場合
10ppm以下で致死率100%
(ハチクサンFLの実用濃度=0.1%=1000ppm) |
<野外効力> |
|
公的試験
(場所: 鹿児島県大崎町)
(機関: 東京農業大学) |
(FL製剤)7年経過後、食害なし
(試験期間: 1989年7月、試験継続中)
(性能基準: 2年間食害なし) |
公的試験
(場所: 沖縄県)
(機関: 琉球大学) |
(FL製剤)4年8ヶ月にわたり安定した効力を維持
(試験開始: 1990年3月) |
自社試験
(場所: 鹿児島県吹上浜) |
(FL製剤)6年経過後、食害なし
(試験開始: 1990年6月、試験継続中) |
<ハチクサンFL技術資料(‘96改訂、No.1)、ハチクサンニュース(No.3)、ハチクサンFL試験成績集(No.3)より>
*14,KT100 : 供試虫の100%が反応
(仰転等) に要する時間 (knock−down Time)
7.安定性
項 目 |
ハチクサン |
<土壌中安定性> |
(原体)半減期 : 426, 347, 541日
(軽埴土)
484日(砂土) |
<土壌中移行性> |
(原体): 大部分は表層から0〜3cmに分布 |
<pH安定性> |
(原体): pH5及び7で安定、pH9でほぼ安定 |
<光安定性> |
(FL製剤): ほぼ安定
(FL製剤希釈液): 安定
(ポリタンク内で3日間野外放置) |
<熱安定性> |
(FL製剤): 安定 |
<コンクリート打設に対する安定性> |
(FL製剤)
460日後の残存率
(室温) |
沖積土壌:65%
沖積アルカリ土壌:64% |
90日後の残存率
(室温) |
沖積土壌:76%
沖積アルカリ土壌:76% |
|
<ハチクサンFL技術資料(‘96改訂、No.1)、ハチクサンFL光に対する安定性(No.7)、
ハチクサンFL講演会資料、ハチクサンFLコンクリートに対する安定性試験(No.10)、ハチクサンニュース(No.2)より>
8.作用機構
項 目 |
ハチクサンFL製剤 |
<作用機構> |
-
経口接触毒
-
シナプス後膜の神経伝達の遮断
-
コリンエステラーゼの活性を阻害しない
|
<忌避性> |
忌避性なし |
<ハチクサンFL技術資料(‘96改訂、No.1)、ハチクサンニュース(No.2)より>
9.その他
項 目 |
ハチクサンFL製剤 |
<建築材への影響> |
(FL希釈液): 32種類 (ボード材、断熱材、
石材、釘、水道管、電気コード
木材、壁紙、カーテン、畳表、
床材等)の建築材で実施。
(試験結果): 32種類全ての建築材に影響
を認めなかった。 |
<植物への影響> |
(FL希釈液): 13種類 (バラ、キク、サ
ツキ、ツツジ、シラカシ、
ツクバネウツギ、ソメイヨ
シノ、アカメモチ、高麗シバ
等)の植物で実施。
(試験結果): 13種類全ての植物に薬害を
認めなかった。 |
<臭い/アンケート> |
FL希釈液:散布中: 感じない 95%
散布後: 感じない 100% |
<刺激/アンケート> |
FL希釈液:散布中: 刺激なし 95%
散布後: 刺激なし 97% |
<希釈時の作業性/アンケート> |
FL希釈液: 良い75%
普通20% |
<ハチクサンFL建築材料等に対する影響(No.4)、ハチクサンニュース(No.6)、ハチクサンFL質問と回答(No.2)より> |
<臭い>
|